大判例

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東京高等裁判所 昭和58年(う)1847号 判決

1 本件は,原判示のとおり,いわゆる暴走族である「ブラックエンペラー」の会長である被告人が,いずれも普通乗用自動車及び自動二輪車数十台に搭乗した右「ブラックエンペラー」の幹部猪野芳孝ら約200名(原判示第三にあっては約150名)と意を通じ,自らは他の運転者の運転にかかる自動二輪車(原判示第一),普通乗用自動車(同第二,第三)に同乗し,右多数の者と共同して,昭和57年12月12日(原判示第一の一,二),昭和58年1月9日(同第二の一,二),同年1月23日(同第三の一,二)に判示各場所で,前記車両を連ね,あるいは並進蛇行するなどいわゆる暴走行為を敢行し,著しく道路における危険を生じさせ,また,通行中の他車に迷惑を及ぼす行為をしたほか,原判示第二の犯行後仲間と共に余勢を駆って高崎市石原町の観音山市営駐車場に赴き,同所において,前記「ブラックエンペラー」の幹部大島好美,新居正彦,曽田達他外10数名と共謀のうえ,同所に駐車中の狩野証夫外2名が乗車中の普通乗用自動車を認めるや,右狩野に対し,こもごも,その左腕を引っ張り,鉄棒で同人の背部,脇腹などを小突くなどの暴行を加えたうえ,鉄棒で同車の後部ガラスをたたき割ったり,その屋根に上って暴れ,また,そのサイドミラーを折り曲げ,車体を足蹴にするなどして同車を損壊する暴力行為等処罰に関する法律違反の所為に及んだ事案であって,その各犯行の動機,経緯,態様,結果,罪質等,特に,被告人は,少年時代に暴走族に加入し集団暴走行為に加わったことから家庭裁判所で保護観察処分を受けたことがあるにも拘らず,今回,自ら「ブラックエンペラー」なる暴走族集団を結成して会長となり,幹部会を主催して本件各暴走行為の立案計画に参画し,多数の暴走族仲間を何回も暴走行為にかりたて,しかも,右各暴走行為の現場で総指揮をとっていたこと,原判示第四の暴力行為事犯にあっては,たしかに被告人自身は直接狩野に暴力をふるったり,同人の乗っていた車両を損壊する行為にはでていないが,高崎に行くことを決した折,被告人において,親衛隊のやつらがいたらやっつけてしまおうなどと仲間にのべたり,仲間の大島好美,島崎典之らの狩野に対する暴行や車両損壊行為を間近で見ながら一時これを奨揚する態度を示していたこと,被告人は過去にも道路交通法違反歴が相当あることなどを考慮すると犯情は悪質であり,他の同種事犯と対比してみてもその刑責は重いといわなければならない。一方原判示第四の犯行にあっては,計画的犯行とまではいえないこと,被告人が本件の非を反省悔悟し,父親の監督のもとで家業の手伝いに精出していること,原判示暴走行為によって現に通行を妨害され,あるいは通行の危険を感じさせた各被害者や原判示第四の暴力行為によって被害を受けた狩野らに対しては被害弁償をしていること,右被害者らが被告人を宥恕していること,被告人には禁錮以上の刑に処せられた前科のないことなど被告人にとって有利な又は同情すべき事情もあるが,前記被告人の刑責の重大性に鑑み,他の同種事犯に対する量刑と比較してみると,右被告人にとって酌むべき諸事情を十分考慮しても本件は執行猶予に付すべき事案ではなく,被告人を懲役9月に処した原判決の量刑は刑期の点でもやむを得ないところであって,未だ重きに過ぎ不当であるとは認められない。

2 原判決は,法令適用の項においては被告人の右第一ないし第三の各一,二の暴走行為につき道路交通法118条1項3号の2,68条,刑法60条を摘示しているにとどまり,同法65条1項を摘示していない。しかしながら,判文に鑑みれば,原判決が刑法65条1項の適用をしたことはこれを推断することができ,刑法65条1項のごとき総則規定はこれを適用するを以て足り,特にこれを判文中に明示しなかったからといって,そのことから直ちに法令適用の誤りがあるとはいえない(大審院明治45年2月27日判決,大審院刑事判決録第18輯222,最高裁判所昭和26年3月15日第一小法廷判決,最高裁判所判例集5巻4号535頁参照)。

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